胎動のお話
1. 胎動とは?

 まだ生まれる前の赤ちゃんを胎児といい、胎児の動きを胎動といいます。初めて胎動を感じるのは妊娠16-20週くらいで、一度お産をした人のほうが、早く感じる傾向にあります。感じ方は妊婦さんによりさまざまで、また妊娠週数により異なります。20週頃は、まるでお腹のガスが移動したようだという妊婦さんもいますし、妊娠週数が進むとお腹を内部からなぞられている様だという妊婦さんもいます。蹴ったり、ローリングしたり、ボコッとしたりさまざまな感じ方を妊婦さんはします。

 お腹の中の赤ちゃんが元気にしているかどうかというのは重要なことですが、実はそれほど簡単にわかる問題ではありません。顔色もわからないし、血液検査も容易ではありません。病院などで超音波検査をしているとき以外の大部分の時間は、何をしているかも見えません。しかし、赤ちゃんがよく動いていると元気にしていると直感的に感じるように、胎動は胎児の健康状態を表すサインです。胎児が元気かどうかを評価することを目的として、マニングの方法と呼ばれる超音波検査を用いた検査が、世界的に普及していますが、5つの観察項目のうち3つが胎動に関することで、胎動の重要さがわかります。

 しかし、現在、医療施設以外の場所にいる大部分の時間で、どの程度胎動があるかを客観的にみる方法はありません。周産期死亡率は世界的に低い日本ですが、それでも家庭で原因不明の子宮内胎児死亡という不幸な状態にあう妊婦さんもいます。また、かつて分娩時の障害が原因を考えられていた脳性麻痺の多くは、既に妊娠中に発症していることが、知られるようになってきました。そこで、家庭にいながらでも、客観的かつ簡単に、長時間にわたる胎動を測定する方法が望まれています。

2.現在の検査法

 分娩監視装置、超音波断層装置として、超音波法によるよるものがほとんどで、超音波で胎児の心拍数、胎動を測定して診断情報とします。トーイツ社(日)、アトム社(日)、横河メデイカル社(日)などから売り出されています。多くは病院内検査法です。

3.私たちの考案した装置

 家庭で長時間(就床中)にわたり、静電容量型加速度センサーを用いて、妊婦さんの腹部より胎動を記録する装置です。胎児のwell-beingのスクリーニングを目的として開発しました。妊婦さん自身で胎動の記録ができます。妊娠週数ごとに適宜に記録し、医師、助産師にデータを渡して、医療指導を受けられるような簡便な記録・解析装置であり、臨床応用を目指しています。